つくでの昔ばなし

村制施行八十周年を記念して発刊された一冊。

こうやまき (その1)

 今から六百年ほど前の,足利時代のことです。
 びわ湖のある近江の国の永源寺から,悟心禅師が三河へ旅をされていました。禅師は,そのおり,こうやまきをつえにしておられました。そして,作手の鴨ヶ谷の甘泉寺にお入りになると,
「生きて大樹となれ。喝!! 般若波羅密多。」
と,おっしゃって,つえを庭の隅へつきたてました。
 つえはやがて芽を吹き,枝をはり,すくすくと育ちました。それが,甘泉寺のこうやまきだといわれています。また,つえの天地をさかさにたてられたので,今でも,こうやまきの枝が,下向きになっているということです。六百年もの樹齢なので,頂は枯れて白い骨のようになり,今にも点に突きささるかのようなのに,下の枝は,キラキラ光るこい緑色の葉にみちみちて,まだまだ元気です。
 こうやまきは,日本の特産で,これほど古く,立派な大木は,日本中ほかに例のないものです。昭和45年に,国の天然記念物に指定されました。
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