つくでの昔ばなし

村制施行八十周年を記念して発刊された一冊。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

天狗とかしき小僧

秋もようやく終わりに近づいて,段戸山にも霜がおりはじめたころです。丸太の山出しをする人夫たちが,20人ほど親方にひきつれられて山に入りました。この中には,かしき小僧の幸一がおりました。“かしき”というのは,人夫たちの食事の世話をするもののよび…

竜頭山(りゅうずさん)

作手村の北部に,竜頭山という,龍が頭をもたげたような異様な姿をした高い山があります。鳴沢の滝から上を見上げると,はっきりとその姿がわります。山頂の洞穴には極楽へみちびく師とされる虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)がおまつりしてあり,霊山とされて…

弘法栗

むかし,作手村の菅沼から守義へ通じる山道を旅の坊さんが通りかかりました。黒い衣は,よれよれによごれ,ところどころやぶけていました。坊さんは,昨晩から,何も食べず,山からわきでる清水だけをのみ,歩きつづけていたのです。旅のつかれと,空腹とで…

赤和尚のカシャ退治

菅沼の楽法寺は,今から六百年くらい前の,南北朝時代に,南朝方の親王のけらいであった菅沼俊治公をとむらうために建てられたものだということです。曹洞宗の格式の高い寺で,江戸時代には,末寺が七つもあり,かなりりっぱな寺でした。菅沼俊治公は,三石…