つくでの昔ばなし

村制施行八十周年を記念して発刊された一冊。

竜頭山(りゅうずさん)

 作手村の北部に,竜頭山という,龍が頭をもたげたような異様な姿をした高い山があります。鳴沢の滝から上を見上げると,はっきりとその姿がわります。山頂の洞穴には極楽へみちびく師とされる虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)がおまつりしてあり,霊山とされていた竜頭山への村人のそぼくな信仰のあらわれでしょう。山頂から少し下ると杉やひのきが緑も濃く茂っています。ここは,作手村鳳来町設楽町の山町村の村境になっています。
 ある日,ひとりの男が,
「竜の頭の岩山へ登ると罰があたるなんて,そんなこたあ,おかしいぞ。」
と,勇んで山へ登っていきました。しかし,いつまでたってもおりてこないので村の人が探しにいくと,竜の頭の下の松にひっかかって死んでおりました。
 大昔のころは,竜頭山にすんでいる竜は,冬の最中でも岩の上にいたということです。大輪村のある男が,寒中に山に登っていくと,確かに竜がいましたが,その背中は凍傷ではれあがり,皮がところどころ破れて,竜はブルブルふるえておりました。
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「お前は馬鹿だなあ,やせがまんはやめて,南の暖かい国へ行くのが利巧だぞ。」
というと竜は,
「ウンそうだったなあ。」
とうなずいて,大空に向かって,大きなうなり声を出すと,たちまち,むら雲がおりてきて,それに乗って南の空へと飛び去ったといわれております。
 また,竜頭の神様のお使いは,まむしだともいわれております。まむしはたくさんいますが,かまわない限りかむようなことはありません。が,いじめたりすると,幾十,幾百のまむしが群でおそってきて手におえないそうです。